『64(ロクヨン)』第4回『顔』

役者の柄や力量の問題もあって記者クラブの面々が他と比べて軽すぎるのが不満だったのだが、東洋新聞本社の記者として堀部圭亮が投入されたので、画面の重みといやらしさがぐっと増した。「サツにどんな教育してんだ」がまるで無自覚なヤクザだ。疑問点をまとめることもせず、何度も二課長を本部に走らせる新聞記者。子どものいじめか!?
外事警察』以来気になる二階堂智が刑事課の御倉役。この人が演じるから、御倉は薄っぺらい敵役の刑事より高いレベルの存在になっている。
全体に重厚な布陣で、千葉哲也がいないのが不思議なくらいだ。
二渡役だけは、田中哲司あたりだったらさらによかった。

雨宮の「あなたは大丈夫ですか? 悪いことばかりじゃない。きっといいこともあります」が気になる。何かを隠しているのではと勘ぐってしまう。

二課長を演じるのが森岡龍。映画『亡国のイージス』に出た若手ががんばっているのは心強い。タイプキャストをするスタッフなら、この人を朴訥なノンキャリにしそうだが、今までと違うタイプをやらせて役者として成長を促すところがすばらしいし、森岡もしっかり期待に応えている。落合は半日のうちに、振り回される存在から主体的に仕事をする男へと成長する。

警察庁とD県警の派閥争いがあるように、記者の世界でも中央と地方の対抗意識がある。これだけさまざまなレベルの抗争が描かれる場面には、大河でさえ久しくお目にかかれない。

「これじゃリンチじゃないか!」。こんなフィクションを見なくたってマスコミのリンチ趣味に辟易している視聴者としてはよくぞ言った!と思う。こんな台詞を言わせたばかりに、またあちこちで中傷記事を書かれるかもしれないが、ロクヨン・スタッフ負けるな!と言いたい。撮り終わっているから関係ないか……ギャラクシーでもなんでもいいから、賞の一つも取ってほしい。

三上は会見会場を出て、捜査の現場へ向かう。「これから本番だ」。ピエール瀧が地味にかっこいいこと!
一課長の頼みを聞き入れて妻を捜査に協力させたかわり、捜査車両に乗り込む三上。仕事のギブアンドテークがきっちり描かれる。「記者にはたらふくネタを食わせて昼寝でもさせとけ。捜査と報道のあいだにはつねにタイムラグが必要だ」「わかりました。順守します」。プロ同士の会話に痺れる。カーチェイスやら狭い車内の閉塞感やら、テレビでこれだけ緊迫感を出せるのはもはやNHK土曜ドラマだけか(WOWOWもたまにやってくれるが)。

「かならずホシを引きずり戻す」
「県道を全青にしろ」
「了解」
「了解」
「自分の仕事をしろ。狩りは俺たちがやる」
柴田恭兵はスカッとする台詞をたくさんもらったなぁ! 本作といい『レディ・ジョーカー』といい、作品に恵まれている。

三上が目崎正人の顔を目撃したさいの反応がひっかかる。たんに、プロの顔と一人の父親として同情する顔を同時に見せただけなのか。
終盤、犯人のヘリウム声からあくどさが消えて素人っぽくなったように感じた。やはり雨宮と幸田が復讐のために仕組んだことなのだろうか。

最終回の予告に"FINAL"の文字。今のところ、『MOZU』から外連を取り、重厚さとストーリーの整合性を保ったのが『ロクヨン』という印象だ。このレベルを来週も維持できたら、映画はとてもかなわないと思われる。前作土曜ドラマは『限界集落株式会社』。ロケがたいへんな農業経営ドラマに真正面から取り組み、山あり谷ありの配分が絶妙だったのに、最後の最後に「え、採算は?」と突っ込ませるような終わり方をしたのが残念だった。『ロクヨン』は横山原作、大森脚本でもあるし、このまま突っ走ってくれそうな予感がする。(視聴者なんて責任がないからなんでも言える)