『64(ロクヨン)』第2回『声』

記者を前にしても、警務部にいても、刑事部に行っても、民間人のところへ行っても、家に帰っても、疎外感と板挟みのストレスをため込んでいく三上。第1回は視聴者が雨宮の地獄を追体験させられるような作りだったが、今回は主人公の四面楚歌&24時間サンドバッグ状態が視聴者のメンタルにも響くような作りだ。

サブタイトルの『声』が、鑑識が録りそこなった犯人の声、公衆電話の向こうから聞こえてこない娘の声、家族が聞きたくても聞けない日吉の声、と失われたものを幾重にも表している。

今回一番エグかったのが、追い詰められて元の上司に頭を下げてなんとかスーパーの警備員になれた幸田を、元同僚の柿沼が監視してきたと判明するくだり。柿沼が急発進、三上が無理やりブレーキ、の繰り返しで見る者の心をざらつかせたうえで「じつは」となる。柿沼、三上と同じくらい見ている側も息が詰まる。高橋和也の目が血走っているのも、ピエール瀧の顔が脂ぎった感じなのも、いかにも寝不足の刑事らしい。

「雨宮は床屋に行く時点で、長官訪問OKのサインを出している」……ネット上の感想を読んでなるほどと思った。感想めぐりをしていけば、さらにいろいろと演出の意図に気づかされそうだ。次回、雨宮の手が同じように妙なアップになるのか興味がある。
長官訪問の次にどんな進展があるのか? 三上はどうやって記者連中を言いくるめるのか? 当面大問題のこの二点以外に、三上の娘の行方、幸田メモの所在、二渡がもくろむ綱紀粛正も描かねばならないわけで、残り3回もものすごい密度になりそうだ。

安藤玉恵がふつうの人のよさそうなおかみさんをやっているのが珍しい。中村優子が『リキッド~鬼の酒 奇跡の蔵~』と二晩続きでNHKで使われているのも嬉しい(さらに、朝ドラにも出ているそうな)。中村が予想外に"ふつうの"元婦人警官に見えるのだが、実は何か隠しているのだろうか?

終盤、自分が100%汚れたくないからって婦人警官に汚れ仕事をさせないなんてずるい!と三上に詰め寄る美雲がよかった。あの台詞は大森寿美男独自のセンスだと思ったが、原作でも「ずるい」と言わせたとかで意外だ。山本美月の懸命の演技にも心打たれた。

万事八方ふさがりで息が詰まるドラマだが、噛みごたえのあるフィクションを求める人間にとっては、陰気な愉しみを与えてくれる一時間だった。