『64(ロクヨン)』第1回『窓』

原作未読。
原作(横山秀夫)、脚本(大森寿美男)、演出(井上剛)が傑作NHK土曜ドラマ『クライマーズ・ハイ』と同じ時点で傑作を期待していた。脚本家は昨年、極私的現代ドラマNo.1の『55歳からのハローライフ』も書いている。
音楽はかっこいいけど『ロンググッドバイ』に似ていると思ったら、やはり大友良英だった。
制作統括が『江』を作っちゃった屋敷陽太郎というのが、ちょっとばかりやな感じ。

徹頭徹尾、ながら見を拒絶した緊張感に満ちた作りであった。延々、雨宮が犯人に振り回されるシーンが続く。視聴者も、もうやめてくれと言いたくなるくらい疲労感、絶望感を共有させられる。
ほとんどがこちらが予想するよりもアップだったり引きだったり、わざといろんなものが映りこんでいるガラス越しに会話する人物をとらえたり、井上の強い意志を感じさせるカメラワークに惹きこまれた。

ピエール瀧は顔が昭和だからこその三上役だそうだ。映画『ローレライ』でもこの人だけは昭和の兵隊に見えたから納得。
秋川役の俳優には若造のにおいしかしないのだが、あんなのがキャップ? 山本美月がめずらしくおとぼけ抜きでまじめに働いている! ごひいきの新井浩文が毒のない役を演じているのが新鮮だ。中村優子高橋和也が出てくるだけでも、ドラマの骨太感が増す。平岳大のエリート臭がすてきだ!! 二渡はこの作品にもからむのか。華奢でなで肩で、ちょっと見銀行員――『蔭の季節』かなにかにそう書いてあった記憶あり――というと、今を時めく堺雅人にやらせたい気もするが、見た目が主演と同世代となると、吉田栄作になるわけか。

演出のすばらしさは否定できないのだが、ストーリーの芯が警察内の派閥争いとか、隠ぺい体質の警察に挑むご立派なマスコミとかになっていくとしたら、視聴熱は下がりそうだ。両方とも土ドラやWOWOWでさんざん繰り返されて食傷気味である。