『吉原裏同心』第5回

今回は、すんでのところで吉原から引き返すことができた少女のお話。宮武美桜ははじめて見たが、つぶらな瞳が時代劇向き。柳沢慎吾はあまり騒がず、悪気はないけどだらしない父親を好演。
吉原の住人や客の掟破りはけっして許さないかわり、ほかに手だてがあるなら貧しい娘を引きずり込みたくはないという、会所の男達の複雑な心中の描き方がけっこう大人向けであった。
この5回で、吉原基礎知識をうまく視聴者に伝えたと思う。
『神谷玄次郎』にくらべると絵作りがものたりない気がするが、夜間の室内シーンの照明はいい感じ。

「八王子から一人で来たのか、たいしたもんだ」ひとまず感心してみせて、それから子どもを諭す老医師に味がある。
「博打で作った借金をかたに、娘を吉原に売る。そういうバカがいるせいで、もっているようなもんだ」

「この間から、よく食べる客ばかり来る」幹次郎の台詞がユーモラスだ。
おけいを諭すくだりの、若夫婦の北風と太陽作戦にほろり。

女衒が谷平を博打に引きずり込もうとするくだりが、夜8時にしてはじわじわ怖い。

会所の場面はいつもいいけど、猫殿は老けたなあ! 頭取の襦袢は黄緑なのか!

貫地谷が少女の世話を焼く演技に包容力がある。幼い子がいる母親役ならじゅうぶんできるのではないか。(できれば江戸か明治の映画かドラマで)

薄墨太夫がおけいをまず神守夫妻に会わせるのは変じゃないかと思っちまったのは、こちらの浅はかさで、できれば身売りなしに良い解決法をさぐるためであった。賢い太夫! これは脚本家ではなく原作者の腕か。

まずは一件落着だったが、谷平みたいな男がほんとに博打から足を洗えるのか疑問は残る。

「先日は、たてつくようなことを申しました。申し訳ありません」
「いいや、万事うまくおさまりました。それでいいじゃございませんか」
思慮足らずだったことをすぐあやまる、まっすぐな若者と、さすが貫禄の顔役の会話。

主役の殺陣は稽古を重ねてもらうしかないのだが、小出クンはちゃんばらがアレなんだから、せめて芝居はもうちとこなれてほしい。第1回『みをつくし料理帖』の北川景子ちゃんなみに顔が力んじゃってるかと思えば、台詞のない場面では気が抜けすぎだったり……もーちょっと、力の入れ方を塩梅よくやってもらいたい。


本編はもちろんいい話だったが、やられたのは予告編。いつもひたむきな風情が魅力的な徳永えりが、どんな新しい顔を見せてくれるか楽しみだ。そして、これからの『吉原裏同心』。「これが花魁ざます!」とばかりの迫力満点な野々すみ花の立ち姿。なぜだか幹次郎の膝にすがりつく場面もある。おしどり夫婦の危機到来か!?
片瀬那奈の登板はないのかな。BSプレミアムの『おわこんTV』で見せる、やりすぎないコメディ演技がすばらしくて、極私的に株が急上昇しているのだが。