『吉原裏同心』第4回

ゲスト女優と会所の男衆の魅力が光る回だった。

番方たちが心中未遂をやらかした男を引っ立て、仙右衛門を先頭に会頭の前に控える様子がなんともいい。甘いもので懐柔される怠慢な奉行もなんともユーモラス。帰る奉行と「ご苦労様です!」と挨拶する番方たち。だめ刑事と組の若い衆みたいだな。山内圭哉は先週よりさらに好印象。無法者とわたりあえる程度にはワルだが、純な心も持ち、困っている人間には親切心を発揮するが、若さゆえの喧嘩っ早さもあり……この人が中心となる話も一話くらい見てみたい。

大工の棟梁をこわがると、「かわいそうを売り物にしているようだな」と言われてしまう居座り男。平成の世によくいる手合いで、棟梁はたいして怖い人でもないという設定かと思いきや、絵に描いたような頑固な職人だった。加藤武はいい味を出していながらも、噛み合わせに問題がありそうな滑舌なのがやや残念。「シまを出しちまいました」、「デエクってのはね」とちゃんと江戸弁が聞けて嬉しい。

野々すみ花は落ち着いて見えるので30代かと思っていたら、まだ27歳なのか。思えば、ふた昔まえなら女優は20代にもなればあの手の情感は出せたものだ。最近はあまりに舌足らずで子供っぽいタイプがふえすぎた。念願の、薄墨太夫と汀女のしみじみした語らいを拝めてなにより。野々嬢が障子を開けて窓枠に腰かける所作のすべらかさ! 貫地谷の台詞回しがいいのは今更なことだが、「さようですか」になんともいえない余韻がある。大門を出ていく男女を軒下から見送るときは、たいそう美しく見えた。

幹次郎が悪漢をこらしめるくだり。おいおい、斬り合いは外でやんなさいよ、家具に傷がつくじゃないか! と思ったが、用心棒を斬ってるあいだに町人コンビに逃げられては困るから、しかたがないか。

割れ鍋に綴じ蓋みたいな男三人が大工の棟梁のもとへのこのこやっていくと、すでに汀女が万事まるくおさめたあとだった。近年の大河が連発する「妻の活躍」は、歴史的に意味のある武士や家来の業績をないがしろにしたものが多いが、『裏同心』の汀女の描写には出しゃばった感じもないし無理がない。なにより、あの幹次郎クンが万能設定だったら、視聴者が辛くなるかもしれぬ。

尾崎将司が脚本を書いたら過度に現代的になるのではと危惧したが、武士の妻を「御新造さん」と呼ばせたり意外とまっとう。武士が遊女に「あなた」と呼びかけるのには、違和感を持った。
四郎兵衛親子の夕餉の場に、ちゃんと女中がひかえていてスタッフに好印象を持つ。

おかやまはじめが、こんなに出番があるのは初見。とりえがないみたいだけど惚れた女には一途な男がみごとにはまっていた。コメディセンスも抜群。
高橋由美子は『蝶々さん』で因業やり手をやってうまかった。今回も真に迫った演技を堪能させてもらった。男にすがる仕草から、肉付きのいい肩から、年増女郎の悲哀がにじむ。大門を出た瞬間の「しあわせなど無縁なはずのあちきが、とうとう解き放された」という晴々した表情! じっさいは二十歳前後で病に倒れ、投げ込み寺に追いやられる遊女がひじょうに多かったらしい。いったい何割の遊女が生きて年季明けを迎えられたのだろう?

テロップで「ほたる」、「ひかり」という役名を見た。かむろの役だろうか。かわいいような、はかなさを象徴するような……。