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『吉原裏同心』第1回

ヨシワラとかウラとかドウシンとか、いやでも興味をかき立てられるタイトルなのだが、いざ始まってみると、いろいろちょっとずつ(場面によっては大々的に)足りないドラマであった。松竹の協力があるBSとの差なのだろうか。佐野元彦統括による時代劇は、出来不出来が半々というところ。

南部潜りを教えてくれた先生が暴力亭主の役なもんで、出てくるたびにコメディ臭を感じてしまう。階段落ちはJAEさんの吹き替え? 『蒲田行進曲』より難易度高そうに見えたぞ。

雪中の逃避行といったら、ものすごくザッツ・ジダイゲキ!な悲壮感とか悲愴感とか出せそうなものを、な~んか軽い。色調に渋さが足りないし、テンポが内容にふさわしくない。
90%以上のチャンバラファンが脱力したにちがいない殺陣シーン。個人的に舶来映画のワイヤーアクションが嫌いなのをさっぴいても、あれはないわ……。最初の殺陣シーンは、なによりカメラワークがひどくて、どんな効果を狙っていたのかさっぱりわからない。

貴重な時代劇の枠が消えてほしくないので、東京の人がなるべく見てくれますように。来週からは、女優たちと近藤正臣と一部の悪役男優を目当てに視聴続行。かつては、日本の女優はどんなに大根でも女郎ははまると言われたものだが、最近の「色気も情念もないのがウリです」的な若手の顔ぶれを見ていると、それはもはや当てはまらないようだ。そんな時流であるからこそ、奥菜恵富田靖子高橋由美子黒谷友香たちのがんばりに期待したい。

表の同心の存在とか、女の通行証の説明とか、いろいろ吉原豆知識がふえそうだ。
初音と幹次郎が顔を合わせる場面。仕切りの向こうの男女の足が丸見え。出世できない遊女の悲哀が感じられる。

あらすじを聞いたときは、小出君じゃかわいすぎるんじゃないか、主役は『桜ほうさら』と取り替えたほうがよかったんじゃないかと思ったが、貫地谷しほりを「姉様」と呼ぶからには、やっぱ小出君で正解か(ヒロイン=貫地谷は動かせない!)。『スタジオパーク』では、背中にカエルでも入れられたのかと思うほど、もぞもぞ落ち着きがなかったのに比べれば、本番はまだよかった……殺陣は、12回のうちに進歩すると信じたい。
ヒロイン役とナレーターが、何をやっても安定安心の貫地谷なのは好材料。彼女が遊女たちの手習いのめんどうをみる場面は見どころの一つ。野々すみ花としみじみ語り合う芝居をぜひ見たい。薄墨太夫は大名のお姫様なみの教養を身に着けたからこそ、太夫の地位にのぼりつめたはずなのに、汀女のもとへ手習いに通うというのは、やや無理を感じる。それとも、特別に歌を詠み合ったりするのか?
来週のゲスト男優が、『神谷玄次郎』でゲス男を演じた山口馬木也。腕の立つワルができる役者さんは貴重だ。

制作を聞いた時、一番心配したのが時代劇経験のない脚本家の尾崎将也だった。時代劇好きとしてカチンと来るような台詞はなくて一安心。四郎兵衛に言わせた「あの世でぐらいは、一緒にさせてやりたいじゃないか。吉原の女にわしらがしてやれるのは、これくらいなもんだよ」が印象深い。ただし、その前の幹次郎の「死ぬなー! 生きろー!」はなんですか、官兵衛のまねですか?(苦笑)

7月4日(金)午後8時から、藤沢周平原作『秘太刀 馬の骨』の再放送開始とな!! これは何度見てもおもしろい。殺陣はばっちりのキャストによる六回に及ぶ真剣勝負、親子夫婦の情愛。活劇としても人情ものとしても上質のエンターテインメントである。『八重の桜』では、優等生すぎるなどと言われた山本むつみだが、この作品ではちゃんと艶っぽさや豪快さを描けている。主演の内野聖陽は、チャンバラがうまいのはもちろん、2005年制作なので今ほど芝居がくどくなくて見ていて疲れないのもよい。番手は下のほうながら、広田レオナのお色気も忘れがたい。木曜日のなんちゃって剣劇の口直しに最適の一品になりそうだ。