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『MOZU Season 1~百舌の叫ぶ夜~』Episode 9

前回は、泣き落としや予定調和と無縁の取り調べシーンを堪能。今回は、虚々実々の駆け引きあり、主要登場人物三人が危機にさらされる点では今まで以上に緊迫感に満ちたアクションありで、Season 1最終回へつなげるにふさわしい内容。登場人物が、転んでもただでは起きない人間ばかりで楽しい。政府高官たちの丁々発止も、ひさしぶりにハイレベルな会話を聞けた気がする。生瀬勝久がたいへんかっこよかった。この人には、お笑い担当ばかりでなく、権力欲や心の闇をかかえた重量感のある男をどしどし演じていただきたい。空虚なまなざしが、人を操る人間のそれであるだけでなく、まだ出てこないさらなる大物にマインドコントロールされている人間のそれのようにも見受けられる。

倉木警部の「真実の断片にしかすぎない」が若干耳障り。「すぎない」言うなら「しか」は要らない。
タイトルが出るあたりのBGMは初出か? 菅野氏のお仕事がすばらしい。
靴音、雨に煙るネオン、サングラスの悪党。オメラスを語る長谷川博己の芝居が、はやりの自然体の正反対である。舞台的な台詞回しに妙な味があってやみつきになりそうだ。

おおおー、警察庁長官が津嘉山正種!!! 仁志光佑先生、たくさん台詞をくだされ!
なぜ、このレストランは礼拝堂もどきの設計なのか。ステンドグラスの美と、出席者の内面の黒さを対比させるためなのか……とにかく、背徳感がありすぎる。

室井の裏にいるのが森原官房長官とは、こりゃまた大きく出たな。森原は、グラークα作戦実行時の内閣危機管理室の長を務め、警察組織再編を企んでいる。で、そこに室井の野心が絡むという。森原役が瑳川哲朗。津嘉山vs瑳川の美声対決に聞きほれる。公安省なんかより、隣国のスパイやテロリストの脅威を語ってほしいが、まあ無理そうだな。
小日向文世の不気味で端正な芝居も見ごたえ十分。「アンチ巨人」なんて台詞が出てきて驚いた。TBSならさしつかえないのか……。

結局、物語は国内の権力争いに収斂していくのだろうか。CIAやMI6が出てくる映像作品なら、国境を越えた諜報作戦が出てくるものなのに……日本の映像世界には外国を悪く描いちゃいけないというしばりが強いようで、国家観すら持たないイノセントな刑事が1960年代の大学生のごとく体制に反抗するみたいな、みみっちい物語になりがちで残念(とくに最近のWOWOWオリジナルドラマ!)。救いは、倉木も新谷も、無力で無害な被害者として描かれてはいないことだ……って、救いっぽくないけど。また、並以上の知能と力を持った大人同士の争いを見せてもらえることには感謝せねばならない。

都会の場面もよかったが、海辺のロケ地も雰囲気があった。
浜辺に離れて座る真木よう子西島秀俊のたたずまい、波の音、遠くに聞こえるカモメの鳴き声。ここだけでも短編映画のようだ。二人がけっして顔を見合わせない演出もセンスがいい。ほかの場面でも、登場人物同士が物理的に距離をおいて会話をすることで、心理的な距離を表している。

百舌が一回目の脱出に失敗するのが気に入った。万事、安易には進まないのだ。

セーフハウスの食堂で、五人が”点在する”と表現したいような配置で映る場面も、ほとんど映画なのだが、これは小さめのテレビ画面だと、よくわからないかもしれない。

このドラマは、大杉以外の言うことは鵜呑みにできないのだが――とりあえず雫の父親は、室井と判明。室井も千尋もうかつな一般人とはちがうだろうに、なぜ避妊しなかったのだろう。グラークα作戦が失敗したのに、千尋だけ脱出できたのは、室井が敵国と取引した結果なのか?
それにしても、倉木さん、女房子供を「愛してた」「愛してた」言い過ぎだと思う。仮にもハードボイルドのヒーローなのに。

美希の父親は、すこし強引だったという。倉木も強引だから、惹かれているということか。真木嬢は、刑事らしくつねに両足を肩幅に開いているところが偉い。

倉木は室井の話を聞きながら、新谷の侵入に気づいたのかと思わせるカットがあったが、室井の発言内容に反応しただけだったらしい。

「秩序を乱すのが俺の役割だ」とラリッたように語りまくる東は、迷惑な中二病以外の何物でもない。公安の下請けのふりして勝手な真似してたんだなぁ。仕事料もらっといて、それはあかん。
「お前は完全にいかれてる」「お前もな」は、Season 2につながる伏線だろうか。
ビルから飛び降りる……つもりらしき東。少佐よろしく光学迷彩使うつもりですか。今度こそ高跳びするのだろうな。サルサル詐欺を何度もやられると飽きる。

トンネルの奥へ室井の運転する車が吸い込まれていくような画面も印象に残る。眠い人間に見せたら、絶大な催眠効果を発揮しそうだ。
「いくら警備計画を変えても、変更できない場所」は重要なヒント。倉木にいろいろ語らせることで、津城はアイデアを得たいのかもしれない。
室井たちは、津城は逮捕しても、倉木は監視するだけなのが意外だ。泳がせて、次に何をやらせるつもりだろう。

大サービスの予告編。大統領にも息子でなく娘がいる。父と娘の関係が気になるドラマである。


ところで、ダルマはどーなった? その件はWOWOWに持越しなのか?