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『MOZU Season 1~百舌の叫ぶ夜~』Episode 7

外面的な動きが大きかった前回と対照的に、静の印象が強い回。シングルファーザー室井の私的な部分が明かされた。あの立派な建物は、公安幹部専用の施設? 生瀬の抑えた芝居に、諦念、忍耐、愛情がにじむ。倉木の「からっぽのままなんです」を聞いた時の意味深な間と表情は、彼の正体のヒントだろうか。娘の交通事故は公安が追う犯罪者とは無関係? 病院の場面の尺はぎりぎり許容範囲……かな。

大杉が「男の中の男になりたかったんだ」という台詞は、今日日の連ドラ界ではまったく貴重なものではないか。

照明に凝りすぎてご馳走の色がわからないんじゃないかと余計な心配をしたくなるレストランの場面。
「お前は今、からっぽなのか」
冒頭で倉木の妄想シーンと見せかけて(そういうわけでもない?)、中盤でドラマ始まって以来のヒーローVSシリアルキラーをじっくり演出。

「いつでもあんたをやれるぞ」
「そうか、俺もだ」
そして、新谷に気づいて携帯をかける東。ワルの三すくみってやつですか。こういうのも『MOZU』の醍醐味である。
微妙に意地悪そうで表向き平静な表情の倉木が不気味にかっこよい。

倉木「一緒にするな」
新谷「一緒にするわけないだろ」
津城が大杉に「(仲間になるなんて)まさか」とやり返したのを思い出す。なれ合いのないドラマ。
「お前と一緒にするな」を二度も言うことで、倉木はなんとか正気でありたい、正義の側にふみとどまりたいとしているのか。「なくすものは何もない(by 新谷)」うえに、他の刑事たちとは違う目的で動いている倉木は、もしかしたらMOZU中一番の危険人物かもしれない。

爆弾犯が千尋というのは、ミステリやハードボイルド好きで、ここまでドラマを視聴してきた人間たちにとっては、まったく意外性がないのだが、あれもひっかけではないかという意見をネットで見かけた。まだまだ油断ならないか。

ステーキ噛んで「う~ん、うまい」と東。なんか、ラリッてるようにしか見えないんですが。このドラマ、飲んだり食ったりして、ちゃんと味を感じたりくつろいだりしそうなのは、大杉だけというのがよい。等身大の良い人だらけのドラマなんて他のスタッフ、キャストでいくらでも作れるから。あと、おしぼりで首とか顔とか拭きそうなのも大杉だけだ。
味を感じそうなもう一人の例外が鳴宮。彼の出演シーンは箸休め? ただのドーナツ好きの善良なお巡りさんが、あんなに警察の奥の事情に詳しいのは不自然に感じる。

本編と同じく予告編もインパクトが強かった。津城に底知れない不気味さがあって惹きこまれる。小日向文世はコヒさんとか呼んでしまうこともあるけれど、圧倒的に巧い。お人よしの役もいいが、嫌味なインテリとか、じつは怖い幹部の役が本領だと思う。東「覚えてますよ、先輩」。初見では先輩ってのは津城かと思ったが、それでは話が飛びすぎるので、ここはやはり若松だろうか。千尋の役割を(どう考えても)原作より大きくしたことが、裏目に出ないことを祈る。

再生時、たまたま一時停止した画面が、倉木が両鼻から(片鼻は無理か)タバコの煙を吹きだしている瞬間で、けっこうおかしくて凝視してしまった……すいません、すいません、私はタバコ吸いません。

6月号のWOWOWガイドが届いた。廃墟に西島秀俊真木よう子香川照之が立つかっこいい写真だ。『幻の翼』のために加入する方には、ノンフィクションW『映像とともにある音楽~劇伴作曲家・菅野祐悟『MOZU』にかけた魔法』もおすすめ。わかりやすいメロディーよりノイズを心がけたという作曲風景が印象的だ。演出家の心意気がほかのスタッフのハイレベルな仕事を誘発する現場を垣間見ることができる。