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『MOZU Season 1~百舌の叫ぶ夜~』Episode 5

意識が朦朧とした新谷の脳内に浮かぶ不穏な荒波で、一気に引き込まれた。こういうところは、本当に映画的だ。拷問現場にいあわせるチンピラに、『ダブルフェイス』で見覚えのある顔が混じっている。おもにチンピラで食っている俳優さんなのか。焼きゴテ(?)を押しつける場面無しに火傷だけを見せ、切りつけるたぐいの直接の接触がない電気ショックを延々見せるというのは、スタッフの苦肉の策。テレビでぎりぎり許容可能な、よい落としどころを考えついたと思う。

きったない映研部室にセット作りのこだわりが感じられる。

「できたよー」。みゆきちゃんの顔が怖い。あっという間にジグソーパズル的画用紙並べ替えを完成させる倉木。ドラマ開始後、5話目にしてはじめて優れた頭脳を効果的に使ってくれたもよう。大の大人が数人がかりで何枚もクレヨン画を準備する場面を想像すると、涙が出そうだ。

新谷は本来犯罪者なのに、なぜ記憶を失ったくらいでカスミンをかばういい人になってしまったのだろう? それにしても知らないおじさんの言葉を信じちゃうフリーライター……もちっとおつむを使おうよ。

ロケ地=北九州!ならではの、追いつ追われつ、ど突き合いの撮影がすばらしい。香川さん、アクションがんばるなー。パンチのポーズがけっこうさまになっているのは、ボクシング鑑賞のたまもの? 真木よう子の蹴りが、かっけー! アメリカ式の、派手さ至上主義は白々しく感じられるし、近隣アジアのノワール映画の残酷趣味も嫌いな当方としては、リアルな重量感と痛みを感じさせるこの手のアクションが一番ぐっとくる。
靴音を響かせて登場する倉木のヒーローぶり! 正直、もっと苦み走った作りでもいいくらい。彼の蹴りをもっと見たい。アーケードのガラスをぶち壊して落下した中神が無傷っていくらなんでもありえない。荒唐無稽はいいけど、「マンガかよ」と失笑を買う方向は避けてほしい。吉田鋼太郎も年の割によく動くのは立派だが……自己主張が鼻につく。監督から「好きにしていいから」と言われたのか、我を抑えられないだけなのかは知らないが。

主要登場人物で唯一、凡人に理解できる思考パターンの持ち主で、安定感や安心感があるのが大杉。ほかの男たちと対照的な大股のがに股歩きも、愚直さの象徴か。

回想シーンで、倉木の後ろにたたずむ倉木妻。黒沢清っぽい、怖い構図だ。

室井警視監も信用できる善人枠? アナウンサーばりのよい滑舌と低音が心地よい。金曜日は、家族のお見舞いかなんかに行く日なのか? まさか意識不明では……。「真木さんも西島くんも、僕とは全く違う俳優さんですね。僕がやると少しトゥーマッチになってしまうような、言葉に気持ちを乗せる表現でも、彼らはリアリティのある表現をされるので、俳優としてうらやましいです」(『MOZU オフィシャルガイドブック』、p69)という生瀬の発言は、営業トークとして正しいが、客観的には謙遜というもので、彼だって抑えた演技はできるし、今作では良識的な抑えた芝居を見せてくれると期待している。

倉木と美希が警視庁のエレベーターに乗り合わせる場面。『ダブルフェイス』なみの殺戮が始まるかとひやひやしてしまった。この時の女の顔がいい。表情を甘く作らなくとも、よけいな台詞をしゃべらなくとも、男に惹かれつつある表現はできるのだ。

『MOZU』恒例の、けっして安くなさそうで、全然楽しくなさそうなお食事シーン。これで何回目だろう? 奥貫さんは今回はどことなく悪役風だ。

美希と大杉のドライブ。美希のわざとらしくない舌打ちがちょっと笑える。大杉が苦虫かみつぶしたような顔で喫煙する姿もユーモラス。暗い車中撮影のライティングも凝っている。ダルマ目撃の話の最中、美希が恐怖を押し殺したような目つきなのが気になる。

倉木妻の「あたし、この家から離れたら死んじゃう」って、まさかあとに「熱帯魚が」が続かないよな……と思うくらい、倉木宅が映るたびに存在を主張する水槽。水を捨てないのはなぜか? あと、倉木は妻の死後、大量の熱帯魚の死骸を始末したから、現在は水だけなんすよね??

大人気の中神クンだが、私としては、倉木さんでも新谷さんでもいいから、とっととヤっておしまいなさい!と強く思う。来週でスタンドプレイヤーは退場かな?

倉木妻の出演時間が長すぎると感じるのは、まったく個人的な好みの問題かもしれないが、男向けの建前とうらはらに、女性視聴者の目を気にしているからあんな作りになるのだろうか? 彼女の「いっしょにいたいだけ」という台詞には、公安刑事と結婚していっしょにいられる時間なんて当てにしてたのか?と突っ込まずにいられない。しかし、あれだけ心が壊れていても、熱帯魚の餌やりだけは忘れなかった千尋はかなりのペット愛好家だ。