『軍師官兵衛』第17回『見捨てられた城』

たまには、よい点を多めに指摘しよう。
合戦シーンで、死体と怪我人の準備に手間をかけているのがよくわかる。準備と後片付けの様子も比較的ていねいに撮っていると思う。

半兵衛の台詞だけ別の脚本家が書いているみたいだ。「おぬしの目はくらんでおる。おぬしは鹿介殿を救えなかったことで、己を恥じておるのであろう。上月における上様のご決断は正しかった。秀吉様とてほかに策がないことがわかっておったから従ったのであろうただ最良の策を考え実行する。そのため嫌われ、憎まれ、命を落とすことがあっても、それこそが軍師というもの。情に溺れ、泣き言を言っているだけでは、鹿介殿も浮かばれまい」。こうして他者比で優れた台詞をもらって、惜しまれながら早目に退場することになりそうだ。タニショーは、メインキャストのなかではいい役をもらったな。歴史上は半兵衛より大人物とされながら、退場を望まれている困ったちゃんが一人いるけれど……。

尼子勝久役の須田邦裕は今回で退場。とくによい扱いだったとは言い難いものの、短い出番で戦国武将の厳しい生き様を表現してくれた。次回はもうすこし大きい役をお願いします、NHK様!

鹿介の首に手を合わせる小早川隆景のたたずまい、台詞ともよかった。「鹿介、長かったのう。尼子再興、これにてしまいじゃ・・・」。凄惨な時代の勝者と敗者の対比、敵にたいする一片の敬意。鶴見慎吾はなにやってもうまいな。

だしを演じる桐谷美玲の目がなかなかい。お姫様を絶対やらせちゃいけない女の子タレントがふえているなか、彼女は装束が似合うだけでも大事にすべき存在だと思う。
たいがいの戦国ものだと光秀が担当する苦悩シーンを、荒木村重がやってるのは、やはり主人公が黒田官兵衛だからなんだが、うまくいけば、今年一番印象に残るのがこの夫婦ってことになるかもしれない。

あとは文句。お紺様が亡くなられた。せっかく高岡姐さんを呼んどきながら、官兵衛を誘惑するでなし、なんかもったいない使い方であった。『テンペスト』のほうがよほど遣り甲斐があっただろう。それにしても、死に際の妻には「なんかあったら家来の言うことききなさいよ!」と言われ、その後は家臣どもに「できた奥さん死んじゃって、おれらの上司やばくね?」と陰口たたかれ、小寺の殿さまの扱いひどすぎである。根拠もなしに主婦を持ち上げるのも、見え透いた手口でしらける。
切れ者には見えなくとも、すくなくとも癒し系の魅力はあった濱田岳の出番が少なくてつまらん。