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『MOZU Season 1~百舌の叫ぶ夜~』Episode 1

まちにまった運動会、きょうははれでした。
と書く小学生なみに楽しかった。ハードボイルド・ファンが快哉を叫んだ夜だったろう。
外事警察』から5年ぶりに期待できそうな公安ドラマということで、この半年、地上波の現代もので楽しみにしてきたのはこれだけと言っても過言ではない。作家として逢坂剛だけが特別好きなわけではないし、格別に好きなキャストがいるわけでもない。おかげで番宣も見ないから、新鮮な気分で見始めることができた。原作を読んだのは15年くらい前なので、内容も断片的にしか覚えていない。再読するとしても、ドラマ終了まで待つことにしよう。携帯がない時代の原作物を、どんなふうに2010年代に置き換えるかにも興味がある。

冒頭から、さすがWOWOWと連携した映画的な作りで感激。百舌の絵は愛らしいが、ひょっとしたら半殺し状態の獲物を枝に刺したままほっておくってかなり残酷だな。
ママつきクリスマスパーティーは音的にも絵的にもちょっとうるさい。残酷と無垢の対比として必要なのか?
ギンザ井筒屋って九州人じゃないと笑えないパロディ。
画面の重厚感が今どきのドラマと一線を画している。同じスタッフによる『ダブルフェイス』がクールだったのと比較すると、体温高めで動物的な印象だ。

まさか倉木妻の遺体の「手だけ」シーンをやるとは思わなかった。スタッフはいろいろ覚悟を決めているようだ。本作といい『クロコーチ』といい、バイオレンスの扱いや男の戦いの演出ではTBSが地上波で一番攻めの姿勢が感じられる。
倉木の幻覚シーンで、ジューサーだけが動いてるのが黒沢清の映画みたいで不気味(西島氏の家電CMを見るたびに同じ不気味さを感じる)。不安をあおるシーンでのカメラの揺らし方はほどほどで安心する。
ダルマの絵が『攻殻機動隊』の合田を彷彿させる。
新谷の電話中に映った派手な電飾のトラックはなんだったのか?
エンドロールに流れるスタッフの人数が完全に映画のそれである。次回放送日の出し方も映画の宣伝の体で、作り手の意欲が伝わってくる。大河ではなんだか気の抜けた音楽を披露している菅野祐悟も、今回はシャープなお仕事ぶり。仁志光祐の脚本は、複数の謎を手際よく提示。余計な感情描写がなくてちゃんとハードボイルドになっていた。

期待にたがわぬ重量感のある滑り出し。タフであることが肯定的な価値を持つドラマを待っていた。演出、演技とも倉木や美希の精神的な痛みの表現に節度がある。ナイーブさを売り物にする人間が出てこないのも清々しい。

『ダブルフェイス』と『外事警察』のキャストが大量に出ているのが感無量。
西島秀俊は、悲哀控えめで怒りをたたえ、あらゆる人間を疑ってかかる、やたら強引な捜査官を好演。手負いの野獣くらい魅力的なヒーローはないと思うクチなので、半年間楽しませてもらえそうだ。長らく連ドラと距離を置いてきたからこそ――すくなくとも自分は民放連ドラの彼を見るのはこれがはじめて――巡り会えたはまり役の主役ではないだろうか。「とにかく無駄を省きたい」なんて台詞を民放で聞けるとはねえ……つまんないことでいちいち感動するチョロイ視聴者である。
香川照之があくの強さを出さないわけはないが、ほかの登場人物よりまともで、ある意味清涼剤の役割も果たさねばならないようだ。
池松君は、もうちょい俊敏さと狂気を出してほしい。長谷川博己は、少女漫画の王子様みたいな扱いされちゃった尚之助よりこういう役のほうがかっこいい。吉田綱太郎は舞台はいいけど、映像だと笑っちゃう臭い演技になりがちなので、気をつけていただきたい。ほかの脇役はコヒさんとか生瀬とかばっちり。田口浩正も太めのお人よし専門から多機能化してなにより。伊藤淳史は情報通というだけでなく、貴重な笑いのシーンの担当係か。
そして、生きている人間の中ではほぼ紅一点の真木よう子。この人が個性を殺さずにゴールデンのテレビに出られるとは、ちょっとした驚きだ。前から見ると凄いのに、後姿が少年のようにほっそりしているのも驚異的。

ながら見には向かないし、笑顔と涙の安売りとは無縁だし、なにより自分好みなので、視聴率はこれから下がっていくと思われる。おまけにアメリカかぶれのPTAかなんかが「タバコ不健康。人をぶつのいくない」とクレームつけてくるにちがいないが、プロデューサー(渡辺信也、井上衛、森井輝)の三氏はくじけず初志貫徹していただきたい。こんなドラマけしからんと思う親御さんは、小学生に見せなければよいのです。
『MOZUオフィシャルガイドブック』に演出の羽住英一郎氏のインタビューが載っていた。「向こう10年、他の人が『MOZU』ができたからってマネをしたら痛い目を見るようなドラマにしたいなと」(p97)。その意気やよし!
今回のブログは決まりを作らない方針だが、このドラマは毎回感想書きたくなりそうなので、とりあえずMOZUカテゴリーを追加。