『軍師官兵衛』第11話『命がけの宴』&第12話『人質松寿丸』

主人公まわりのアクションがない回は見どころなしと悟っていたはずが、軽度な拷問のように感じられたこの二週である。

先週は、黙っていても騒々しい陣内孝則宇喜多直家として登場。芝居は『太平記』のバサラ大名と同じ、外見は当時より太ったかなぁ、という印象だ。この人といい、竹中直人といい、過去の大河の焼き直しみたいな演技しておもしろいのかな。

今週は、侍女の妊娠ネタが冒頭を飾った。戦国大河がこんなことでいいのだろうか。でまた、光に対する「二人目はまだか?」プレッシャーをしつこく出してくるのだが、どうしてもやりたいなら、もうすこし練った台詞を考えてほしいものだ。日本人は平成になっても真綿で針をくるんだような物言いが得意な民族なのに、あれですか、小学生をあらたな視聴者に取り込みたいがゆえの芸のない言い回しなんでしょうか。

特攻服もどきを着込んだ信長が、そのへんの族の総長なみの貫禄も知略も感じられないのが辛い。

賢妻(を想定してるらしい)おねが平成の分からず屋の主婦みたいで癇に障る。数々の猛将を育てたと言われているそうだが、男の家来や学者や侍女がやったことまで「おね様のお陰」にするのはやめてね。光が息子たちに剣術を仕込むぶっ飛びシーンを作ったスタッフゆえ、いろいろと危惧されてならない。

松寿丸の人質騒動。父親は苦渋の選択、母親は全力で反対、本人が「喜んで参ります!」って、結局どこからも苦情が出ないようにとの配慮からくるストーリー展開のようだが、目的は達せられなかったようで、ネット上は苦情の嵐だ。夫婦のいさかいにしても、母子の押し問答にしても、市川森一による『花の乱』の足元にも及ばない。富子と将軍は、意見が合わなくても声を荒げたり顔を歪めたりせず、格調高い日本語の応酬で見せてくれたのだが。
岡田准一にしても中谷美紀にしても、知的な役ができないわけじゃないどころか、得意なのはインテリ役なのに、回を追うごとに気の毒感が増すばかり。前川脚本が造形する官兵衛に比べたら、ぶっさんのようがよほど頼りがいがあるように見えるがね。『平清盛』も脚本家がオリジナリティーを発揮する部分はストーリーが幼稚で台詞がスカスカだったが、情念系の台詞が多かったため、役者の力技で濃厚にできた場面が多々あった。あと、BGMと撮影の力。今年は平板な説明台詞が多いから、キャストがカバーできる範囲が限られる。谷原章介が健闘している印象なのは、美声にごまかされているのかもしれない。

脚本は脚本家よりプロデューサーの意見が反映される場合もあることは、『八重の桜』で学んだ。今年の中村高志統括のインタビューによると、どうも幼稚でわかりやすくしないと視聴者がついてこないという発想で大河が作られているらしい。志が高い『坂の上の雲』にかかわった中村氏が仕切っているから大丈夫と期待したのは早計であったらしい。良質な『坂の上』が低視聴率だったことに懲りたのなら残念至極。
青山・土器山の戦いの回が今年のピークと見切った方がいいのだろうか。半兵衛退場まで継続できるかできないか、それが問題だ。