大河ドラマ

『鎌倉殿の13人』第9回『決戦前夜』

毎週のように出入りの場面があって楽しい。「ではいり」ではなく「(ヤクザの)でいり」。 現代劇作家としての三谷幸喜、それも一部の舞台やドラマの書き手としての彼はわりと好きだが、時代劇作家としては今までどうも肌に合わなかった。『新選組』はまった…

今年の連続ドラマ

『俺の家の話』 最終回を見た今となっては、初回から見直したら重みと湿度を感じそうだ。長瀬智也の引退作品がクドカンでよかった。 『ハコヅメ~たたかう! 交番女子~』 原作はある程度既読。家族につきあうのでなかったら絶対見ないタイプのドラマ。原作の…

今季のドラマ

『青天を衝け』 大森美香脚本で唯一おもしろかったのが、朝井まかて原作の『眩~北斎の娘~』。その朝井の長編『恋歌』は血で血を洗う水戸藩の抗争を描いた辛口の傑作だった。万が一、今年の大河が『恋歌』も参考にするなら、すこしは噛み応えのあるドラマに…

『麒麟がくる』第十七回『長良川の対決』

たいていの大河では4~6月あたりに主人公の父親的存在が退場、代替わりが行われる。今回はそれに当たる一つの山場である。作り手が力を注いだのは道三の死の見せ方だったろうし、視聴者側も多くはそこが目玉と感じたようだ。 自分は明智家の代替わりの場面と…

この冬の大河と朝ドラ

『おしん』 目利きの友人の強い勧めにより、再放送を視聴続行中。総集編はすでに視聴済み。初回からずっと構成がしっかりしていて、毎日鬼のように大量の台詞が流れてきて、それが各人の個性とぴったり合っていることに脱帽である。『あまちゃん』や『てるて…

『いだてん』とこれまでの大河、これからの大河

『いだてん』は、近現代スポーツ史を描いた傑作大河であった。志ん生が語る"腹っぺらしのマラソン馬鹿と泳げないけど水泳大好きまーちゃん"だけの物語と見せて、彼らをめぐる人々、そして志ん生の半生も志ん生の芸に魅せられた父子の人生も語る、名人芸のオ…

『いだてん~東京オリムピック噺~』最終回と初回

『時間よ止まれ』終了後、マジで拍手してしまった。スタッフ、キャストの皆さん1年間ありがとう! 最終話の雑感*老けメーク技術の進歩にしみじみした。イギリス映画の『炎のランナー』は冒頭、いきなり顔にゴムくっつけたみたいな老けメークが映って、「こ…

12月13日『クマロク!』

『いだてん』最終回直前インタビュー #中村勘九郎*一つのシーンであれだけ走らされるとは思わなかった。以前は、走るのはもちろん歩くのも嫌いで革靴やブーツしか履かなかったけど、大河の撮影が始まってからはスニーカーを履くようになった。今じゃランニ…

第45回『火の鳥』

3話かけて大人の政治ドラマを描き、まーちゃんは陽気な寝業師に負け、寝業師はあっさりオリンピック担当大臣をやめ……前回は、まーちゃんをお友だちが訪問する場面で終わった。重い政治ドラマっぽい流れを、懐かしいような青春ドラマのノリで締めてくれた。 …

第44回『ぼくたちの失敗』

金栗四三と家族友人の素朴な人間関係から始まった『いだてん』が、ここ三話くらいはスポーツドラマとして以上に政治ドラマとしてわくわくさせてくれる。 主人公が転落する回だからこそ笑いを大切にしたとはスタッフの弁。その意気やよし! インドネシアでの…

第40回『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

『リバースエッジ大川端探偵社』でうらぶれた男を好演した岩井秀人。以来気になる存在だったが、今回は肝心な時にアキレス腱を切って演説が出来なくなる外交官、北原英雄がはまりすぎていた。「デゾレ」連発が気の毒ながら、演出の妙もあってかすかにおかし…

『いだてん』いよいよ最終章!

次回のサブタイトルは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』!田畑政治・後編への期待止まず。信長も龍馬も出てこないけど、魅力的な男女が織りなす人間模様と日本が、そしてときどき世界が動くさまが生き生きと伝わってくる。今のところ残念な回はゼロである…

『いだてん』息切れせず

7月に入ってからも箸休めの回やら残念な回やらがまったくない。歴代の傑作大河の中でも、なかなか稀なことではないだろうか。 第28回『走れ大地を』「実はな、記者を辞めようと思う。新聞なんて無力だ。いくら得意になって政府を批判したところで、庶民の暮…

『いだてん』第27回『替り目』

とっくに折り返したのにと思ったが、今回が本当に主役の替り目だった。クドカン&大根仁のコンビにしてはしんみりしちゃったなと思ったが、しんみりついでに人見選手の最期を入れなかったのは見識。前回がりっぱな『人見絹枝の一生』で、若くして亡くなったこ…

『いだてん』第二部も快走つづく

『いだてん』の何がいいって、ドラマ全体にタイトルどおりの疾走感や生命力があふれているところである。さらっと見てもおもしろいし、再見すればいつも新しい発見がある。クドカン本人が全然エラソーじゃないしインテリぽくもない(失礼!?)ので作品自体も単…

コメディ・ドラマ

『おしい刑事』おもしろそうな企画だなあと思っていたのだが……演出のテンポがコンマ数秒、自分の生理と合わなかったらしく第一話でリタイア。 『大富豪同心』豪商が財力に物を言わせて孫の卯之吉を奉行所に就職させる。お孫ちゃんは、賊を前にすると恐怖のあ…

『いだてん』第11回『百年の孤独』

月刊TV雑誌"TVnavi"では第11回は『威風堂々』と記載。負けたりとはいえ堂々たる走りを見せた弥彦にふさわしいけれど、『百年の孤独』はより深みがあってこれでよかった。「日本人に短距離は無理だ。百年早い」と語る彼に、「後輩たちが400mリレーでメダルを…

『いだてん』第1回『夜明け前』

祭りが始まった! 大友良英の疾走感のある音楽。明治の溌剌感とか大正モダンとか戦後の高度成長期の明るさとか、いろんなものを感じさせる横尾忠則の絵作りも楽しい。紆余曲折はあっても、「スポーツって楽しいもんだ」、「オリンピックっておもしろいもんだ…

今年の国内ドラマ

民放の連ドラでリアル視聴したのは『コンフィデンスマンJP』のみ。古沢節は健在だったものの、『リーガルハイ』第一部や『デート』に比べると、コンマ数秒自分好みのテンポより遅かったり、どんでん返しがしつこく感じられたりで、永久保存する気にはなれず…

『西郷どん』第37回『江戸無血開城』

「慶喜を将軍に推すために輿入れしたのに、今は慶喜を倒せと頼んでいる」と語る天璋院。ここまで毎回見ていれば、感慨を持てたかもしれない。景子ちゃん、よくがむばった! 室内シーンで、葵の紋をかたどった欄間が映ったのには心躍った。ありえない西郷と慶…

三連休中のドラマ

『乱反射』石井裕也が脚本演出というのに惹かれて録画。期待以上のおもしろさであった。 ブリタニカ国際大百科事典小項目事典によれば、「乱反射:物体の表面がなめらかな面でないとき、その凹凸のために入射した光が,いろいろな方向に反射散乱される現象。…

『西郷どん』第三十二回『薩長同盟』

二月で早々に挫折したにもかかわらず、役者だけは見逃してはもったいないという風評につられて今月からおめおめとカムバック。一番よいのは撮影班という印象だ。富貴が部屋にたたずむ光景はいつも美しいし、室内の対話場面など音を消していたらまるで重厚な…

吉報!

ニュースとドキュメンタリーはだめでもドラマだけはおおむねハイレベルなNHKが、大河ファンにたいへんな朗報をもたらしてくれた。2020年の大河は明智光秀主役の『麒麟がくる』と決定。脚本は池端俊策でしかもオリジナル。そして主演は長谷川博己。『真田丸』…

『西郷どん』を二話まで見て

原作未読だが、林真理子の他の時代小説は数冊読んだことがある。いずれもNHKのお偉方にウケそうな主婦の視点だのリベラル仕草だのとは無縁の、時代背景を尊重した筆致であるのと、主人公をかなり突き放した視点で見ているのとが印象に残っている。第一話のジ…

『おんな城主直虎』終わる

『真田丸』と二年続けて主人公にあまり魅力を感じず、大河にしては撮影が残念な場面が散見され、音楽も――本来、菅野よう子作品は好きなのだが――好みではなかったし、脚本家の手癖に辟易させられることもあったが、『風林火山』終了後、何度も死んでは息を吹…

『おんな城主直虎』第45回~第46回

歴代大河の首桶登場回数のランキングを知りたくなってきた。昔の大河で首桶といったら、主人公が打ち負かした敵の大将のそれであることが多かった。今年は違う。しかもhot warの戦利品たる首ではない。大国に国を潰されないよう交渉をまとめるために、主人公…

『おんな城主直虎』第39回『虎松の野望』

"まだ十五歳"を強調するためとはいえ、虎松の顔芸のしつこさに辟易した。ただ、小才覚のあるこわっぱが大人にぺしゃんこにされる展開には、知的ゲームを見るおもしろさがあった。振り返ってみると『直虎』ワールドは、未成年を不当に活躍させないし、いわゆ…

『おんな城主直虎』第33回『嫌われ政次の一生』~第38回『井伊を共に去りぬ』

今年の大河は評価はできても熱中はできないと感じてきたが、ここ数回はドラマとして引き込まれている。 主人公がみずから手を汚して政次を死なせる場面には度肝を抜かれた。そこまでして井伊を守ったのにあっさり領主の座を下りる直虎や、(真意はともあれ)…

『おんな城主直虎』第28回『死の帳面』

"国衆はつらいよ!"と"武士だけでなく坊さんや商人も含めた戦国の風俗"の描写に力を入れている今年の大河。ちょっと受け狙いな感じの"政次カワイソス"パートにはあまり乗れず。うじうじしたしの相手に暴走気味の父性を示した回以外は、主人公にもこれといって…

『おんな城主直虎』第15回『おんな城主対おんな大名』

ストーリーはそこそこ骨っぽい。一番の期待は菅野よう子の音楽だったのだが、自分が勝手に期待していたとんがったメロディーとはほど遠い――プロデューサーの意向なのかどうかわかりかねるが――子ども向けの時代劇アニメに流れそうなBGMがたびたび流れる。昨年…