『太陽を愛したひと』(NHK総合)再放送決定!

9月1日(土)午後3時5分~4時15分に再放映

昨日やっと録画をチェックしたばかり。年内に午後8時台に再放送してより多くの人に見てもらいたいと思ったが、ずいぶん早くに再放送が決まって何より。

今月は『満願』(NHK総合)に心臓をわしづかみにされたが、『太陽』にはそれとはまったく逆のベクトルで惹きこまれた。7月末のBSの『悪魔が来りて笛を吹く』から数えれば傑作三連発ということで、NHKの単発ドラマは黄金期状態?!

原案『太陽の仲間たち』(三枝義浩)は未読。
イギリスでの学びを経て障害者スポーツ普及につとめ、東京でのパラリンピックを実現させ、障害者の自立のために就労施設〈太陽の家〉を設立――ハンディを負った人々の社会復帰に尽くし、長くはない人生を駆け抜けた整形外科医・中村裕と彼を取り巻く人々の物語である。知的で誠実な開拓者はハリウッドの得意ネタだが、本邦でもきちんとした形でそれを描いてもらえて実に嬉しい。

「失ったものを数えるな。残っているものを最大限に生かせ」
千葉聡史Pの志が伝わってくるドラマであった。
佐々木章光Dは、落ち着いた色調、落ち着いたテンポで奇をてらわず決してだれることなく、胸を打つドラマを作り上げた。わずか70分とは思えない濃密な時間だった。
山浦雅大Wの台詞のセンスがすばらしい(原案本からの抜粋かもしれないが)。上記の「失ったもの」云々はもちろん、
中村に感化され車椅子で10キロもの道のりを移動したアキラの「俺、(体だけじゃなくて心も)生きてる!」
中村の「皆さんには税金を納めてもらいたい」、「甘やかして保護するだけじゃだめだ」。
何かといえば保護して補助金漬けが正解みたいな論調のテレビという媒体で、こんなまっとうな言葉が聞けるとは驚きである。
『太陽を愛したひと』も温かく時に熱く前向きな物語のタイトルにぴったり。

子役の「おかあちゃん、がんばれ」を聞くだけでもこのドラマの値打ちがわかる。
もちろん向井理を初めとする大人のキャストも好演。正直、志尊淳のうるうるしがちな瞳はながらく苦手だった。甘さ過剰な気配の時もあれば、一歩間違うとすごい被害者意識垂れ流し路線に行きそうと懸念させる時もあった。だが、『太陽』では全然甘くない。中村に向かって「あんた嘘つきだな」、「障害者だからって、大事に大事に俺のこと傷つけないように……そういうのがさ、いっちばんむかつくんだよ」。アキラの戦いは中村の戦いの軌跡と重なり合い、彼の喜びは中村の喜びでもあった。

些末なことではあるが、外国人キャストがま~~たあの人か、とちょっと現実に引き戻されてしまった。子役の発掘能力に長けたNHKスタッフには、そろそろ外国人俳優のストック増加ないし路線変更を視野に入れていただきたい。

8月はひときわ「受信料払うのは業腹」の感が強くなるシーズンであるが、ドラマだけでもここまで高品質だと文句は自粛せねば、と思う。

『西郷どん』第三十二回『薩長同盟』

二月で早々に挫折したにもかかわらず、役者だけは見逃してはもったいないという風評につられて今月からおめおめとカムバック。一番よいのは撮影班という印象だ。富貴が部屋にたたずむ光景はいつも美しいし、室内の対話場面など音を消していたらまるで重厚な大河みたいだ。問題がある脚本を他のもろもろの要素がある程度補った大河といえば『平清盛』がある。音楽が圧倒的によかったし――「蕎麦屋の出前を頼んだらベンツが来ちゃいましたみたいなアンバランスさ」と音楽担当者が自虐的にコメントしていた――スタッフの熱気が伝わってきたしよいキャストも多かった。主演は『西郷どん』の鈴木亮平氏が圧倒的に上である。それだけに、タミタミタミタミ言わされているのがとても気の毒。『清盛』は歴史を知っている視聴者を前提とした二次創作めいたエピソードがぶつぶつと出てきた。今年のは歴史を浅~くさらっているみたいだが、何を見せ場にしたいのかよくわからない。ちゃんと主人公が死ぬとこまでやってくれるのか心配になるスケジューリングだ。

ゲベール銃とミニエー銃の比較はおもしろかったが、ほんとにあそこまで威力が違ったのか? 弾の形を云々する台詞だけでなく、絵でもっとわかりやすく見せればよいのに。

大河ファンのあいだで一番人気の慶喜by松田翔太はたしかに魅力的。『八重の桜』の小泉孝太郎ほどホンに恵まれていないので、しばらくは"孝太郎の次に魅力的な慶喜"として記憶に残りそうである。いい人っぽく見せようとする(不要な)小芝居をしないところが偉い。林真理子の『正妻』に出てくる"貴人に情なしMAX"の慶喜をやらせてみたい。『西郷どん』原作は未読だが、林氏ならロッシュのどす黒い魂胆くらい描いていそうなのに、今作ではエゲレスの狙いは軽くスルーするのだろうか?

町田啓太演じる小松帯刀がちゃんと賢そうに見えるのが嬉しい。居ずまいの正しさがよい! 町田氏は最近の若手にはめずらしく(?)知的エリートをやれる人で、『ラストチャンス 再生請負人』(BSジャパン)でも好演している。NHKは各種歴史番組でも小松帯刀の重要性を説いているのに、この大河のなかでは下っ端の西郷に向かって「何も申してはなりません」などと丁寧な口をきいていて……作り手はご家老をなんだと思っているのだろう!? いつか大久保利通by町田啓太が実現しないだろうか。3話完結の『維新の男列伝』とかで。

『八重の桜』は前半は傑作だったが、玉山鉄二の扱いは惜しまれる。『薩長同盟』では、逃げの小五郎にしては武骨な魅力を感じさせた。再来年の『麒麟がくる』で大きな役がつかないものだろうか。

高橋光臣が予想よりしゃべらせてもらっているけれど、今のところはもったいない使い方と感じる。

「若者たちはとっくに助け合うちょる」と語る西郷どんは何歳なの? あの場の皆さん、若く見えるんだけど……。
「なにが薩長同盟じゃ、長薩同盟じゃないとぼくはいやだ」とのたまう人はいなかったのかしらん。

『BORDER』(テレ朝チャンネル1)再放送終わる

聞きしに勝る快作で満足満足。堪能した『MOZU』でさえダビングが億劫で結局やらずじまいだったが、このドラマはダビングしてもいいかなという気分。

放送前からプロットはすべて決まっていたとかで、大人の事情で路線変更しましたみたいな事態が起こらず祝着至極。探偵ものや極道ものの実績から信用していた橋本一Dも、お初の波多野貴文Dもクールでダークな絵作り、間延びしない場面転換で惹きつけてくれた。
笑顔の安売りがないから第4話のホームレスの笑顔が心にしみる。涙や怒号を控えてきたから最終話の少年の涙や石川の怒号が生きる。影の協力者たちがふだんはいい人ぶらないから、最終話での無給の働きが心を打つ。最終話の"いきなり終わらせる"幕引きは、この作品特有の美学を感じさせる。すべて二文字のサブタイトルがかっこいい。
川井憲次の音楽も理想的なBGMだった。
脚本担当の金城一紀は、今回はいい面だけ出してくれた。石川に語りかけてくる死者が、初回は意図的に狙われた善良な被害者だったのが、第2話からは連続殺人犯、市民から制裁を受けた悪人、愉快犯の犠牲になったホームレス等々。全9話、犯罪の内容も死者の立場もバラエティに富んでおり、まったく重複しなかったのが見事。最初は記憶喪失だった死者が、だんだんと事件とは無縁で死んだことを思い出す第5話がユニークで、ちょっとほのぼのさせられた。

長身の小栗旬青木崇高がコンビを組む割にアクション・シーンは少なかったが、第5話で車のボンネットを飛び越える場面がかっこよかった。幽霊となったクドカンが佇んで「かっこいー!」とつぶやく場面がなんともシュールで笑える。

基本的にはエンタメ・ドラマではあるが、「法執行者はいかに行動するべきか」というテーマが何度か投げかけられる。第3話の自警団の言い分を聞いて「見逃してやれよ、石川!」と思ってしまう自分はこの手の仕事についてはいけない人間なのだと再確認した。第7話では、犯人に決まっている学生を逮捕したい石川の行動が"正義の暴走"であると明言される。「あなたにドン引きですよ。頭冷やしたらまた会いましょう」と言い捨てて立ち去るスズキ。「事実と違うかもしれない情報を拡散しろってこと? (そんなことはできないよ)」とコンピュータの電源を落とすサイモン&ガーファンクル。滝藤賢一野間口徹、浜野謙太が裏社会のプロを楽しそうに好演。
最終話で「今度、仕事抜きで飲みましょう」と誘う赤井。死亡フラグかと思いきや、べつにそんなことはなかった。毎回ちょこっと出てくるバーテンが渋い。山口祥行はVシネのスターとして、『たけしのこれがホントのニッポン芸能史』の名悪役編でインタビューを受けていた。WikiによればJAC出身とか。次は刑事役で拝みたい。

クドカン以外で印象に残ったゲストは第7話の神坂(中村達也)。かなり手ごわそうな裏社会の掃除屋だった。石川と格闘中、「元気がいいね、男の子はそうでなくっちゃ」とのたまう。金城氏はこういう台詞のセンスが抜群だ。
安藤(大森南朋)は最終話にふさわしい悪党だった。BORDERを越えて向う側へ行ってしまった石川は結局安藤に負けたわけだし、あそこで安藤を殺さなかったら次の被害者が出たわけで、どちらにしても勝ち目のない相手なのだった。

悪党面の遠藤憲一が年相応の腰痛に悩む良識的な班長にはまっていた。北見敏之は「ああ見えてじつはいい人」ではなく、やっぱり汚れた人の役だった。でもまあ、たいした高級取りでもないのに責任だけは重い仕事についた人がああなってしまうのも、わからないでもない……と思ってしまう自分はこの手の仕事についてはいけない人間(以下略)。

特別検視官役の波瑠は――あのミニスカートがキャラを引き立たせるのに最善なのかどうか疑問だが――徹頭徹尾冷静で石川のちょっと変な行動に気づいてしまう仕事仲間として光っていた。「言ってごらん」の台詞があんなふうにしっくりはまる女優はなかなかいないのではないか。

青木崇高は民放には居場所がないかと思っていたのだが、この手の男のドラマが増えて行けば、彼の民放での出番もふえていきそうだ。
当て書きとはいえ、主演の小栗旬は"死者が見えてしまう男"を説得力をもって体現。過不足のない苦悩の表現がすばらしかった。

テレ朝は報道が低レベルでときどきよいドラマを作るところがなんだかNHKの亜流みたいだが、今後もこの手のミステリを作ってくれるなら、ときどきチャンネルを合わせたい。

『チア☆ダン』ep1-2

オダギリジョーが出るからには一定水準かと期待してチェックしてみた。太郎は彼でなくてはできないような役とも思えないし、もともととくに食指が動く題材でもないのだが、家人が喜んで見ているので、三か月つきあうことになりそうだ。

チアダン部の友情物語に太郎や椿山の再生を絡めてストーリーが進むのかな?

楽な道を選び、さらに環境に不平を言うのが、近ごろのノイジーな女性たちのトレンドとお見受けするが、あおい(新木優子)はその正反対の道を行く。視聴者の間では共感を呼ぶのだろうか? それにしても新木嬢は別嬪なり。あと数回ご尊顔を拝みたい。

初回の太郎の「がんばればかり言われるのもきついけど、がんばらなくていいばかり言われるのもしんどい」みたいな台詞には重みがある。ep2の桜沢教頭の「いやなこと言うのはいつも俺の役目か」にも、「え、意外と大人の鑑賞に堪える話になるんかな?」と期待させられた。木下ほうかが演じるからヤな奴と思わせて、実は立場に縛られた苦しさが……みたいな方面も描かれるとしたら深い話になる。

穂香役の箭内夢菜は大河でお姫様役かなんかで見てみたい。

このドラマの一番の苦手要素は主演女優なのだが、「人がやりたいことを笑うな!」の演技には心打たれた。

『ポリティカル・アニマルズ』全6回(AXN HD 海外ドラマ)

8月に再放送予定。

題名から『ハウス・オブ・カード』並みの獣の闘争ドラマかと思いきや、それ以上に理想の追求、公務と家族の幸福の両立の問題、政治家とジャーナリストの付き合い方、みたいなテーマに比重が置かれた盛りだくさんなドラマだった。

国務大臣の座に安住したくないヒロイン、エレイン・バリッシュを演じるのがシガニー・ウィーバー。若かりし頃は、お気に入りのコラムニストが「女だけど顔の作りが紳士」と表現したものだ。現在はさすがにちょっとおばさん風味も出てしまったなぁ……と感じさせる部分もあったが、ファイティング・スピリットあふれる女性政治家を好演している。かなり前のインタビューで「テレビはいちいち説明的な演技を求めるもの」と言っていたので、ドラマには出ない主義かと思っていたが、どんな心境の変化があったのだろう? エレインの元夫で女癖が悪く、だが本音では"エレインが一番"の元大統領バド・ハモンドを演じるのがキーラン・ハインズ。『裏切りのサーカス』の演技が懐かしいが、今回もタフな男を魅力的に演じる。ウィーバーと並んでも全然迫力負けしないところがいい。

このドラマにかぎったことではないが、成人男女の性欲や権力欲を"あるがまま"に描くのが米国ドラマの好きなところだ。それによって傷つく人がいるいない、というのはまた別の話。

バドがインタビュー番組で下品な発言をしたほんとうの理由が明かされる場面には、これが男気、深謀遠慮というやつかと唸らされた。

『ハウス』に続いて、今回もヒロインの母親を演じるのがエレン・バースティン。『ハウス』でのテキサスの名流夫人と『アニマルズ』でのショーガール上がりのマーガレット婆さんとでは、設定はかなり違う。それでも、胆が据わっていて娘の本質を理解していて、頭が切れるところは同じだ。
マーガレットは、パーティーで女記者相手に胸がすくような台詞を吐く。
「あなたのこと知ってるけど時間の無駄。あたし、しゃべっちゃいけないの。酔ってるか、正直すぎるか」「大丈夫、今夜は仕事抜き」「そう、仕事抜き? あなたボーイフレンドいる? (相手うなずく)そーなの、レズビアンかと思ってた。だってあなたってどんな相手にも取り入る。うちの子はそういうの下手。でもあの子は気骨があるのよ。それにあなたは性根が腐ってる。生意気な口で人さまの悪口を書きたてて、お給料を貰ってるんだもんね。でもボーイフレンドがいる、凄いじゃない! よほど男を喜ばすのがうまいのね」。しかし、言われたスーザンは実は仁義を知る女であり、根っから腐ってたのは彼女の後輩ジョージアなのだった。枕営業で先輩の男アレックスを寝取って仕事をもらい、さらに暴露記事を自分だけのスクープにするために"不適切な関係"を上層部に訴えて、アレックスを失職させる。「ジョージアみたいな女はいない」という女性視聴者の眠たいクレームで放送打ち切りなどとならなかったあたり、ポリコレにうるさいあの国もまだ健全な部分が残っているようだ。

で、くだんのマーガレット婆さんは、出来のいいほうの孫ダグラスのフィアンセが拒食症であることをいち早く見抜き、本音を吐き出させるために、マリファナ(? ともかくあまり強烈でないドラッグであることはたしか)に誘ったりする。この観察眼、交渉術。彼女も政治の道に進んでいたら大物になっていただろう。

ヒロインが、三十歳にもなろうかという息子の不始末に翻弄される設定は時世の反映だろうか。自立心が尊ばれるアメリカでも、日本並みに親離れが遅くなりつつある? この出来の悪いほうの息子TJにまつわる回想シーンががちょくちょく挟まれる。ぼんやり見ていると、過去だか現在だかわかりにくい場面もある。加入者8900万人というUSAネットワークで放送されたそうだが、ペイチャンネルならではの「ついてこれるやつだけついてこい」式の演出なのだろうか。

エレインはサミットに向かうガルセッティ大統領に辞表を渡す。追い落とそうとする相手であっても、「ご一緒できて楽しかった」と礼を尽くした文章をしたためる。ガルセッティは意外にも「僕らが組んだ方が国のためになる。僕の副大統領候補として出馬してほしい」と答える。彼は国難にさいして、最初はエレインと対立しても、彼女の案を受け入れることもあった。エレインの思いはじょじょに変わっていく。「私って、ダメな男のいいところを見つけてしまうのよね」。この台詞と、終盤の「私たちが思うほど酷い人間はいないのかもしれない」が印象に残る。浮つくことなしに、健やかな人間肯定の空気で終わるドラマにはなかなかお目にかかれないものだ。

ダグラスとアンの結婚式で、バドがイザヤ書を読み上げる。
「あなた方は喜びと共に出で立ち、安らかに導かれる。
山と丘は声を上げて喜び歌い、野にある木々も皆手を叩く」
美しい場面だった。

リベラル特有の独善性を免れないエレインが「アンは三々九度やりたいでしょ?! 多様な文化ウンヌンカンヌン」とはしゃいで息子にたしなめられる。「日系だからって日本絡みのネタを振るのは差別的だよ」。こういう"意識高い人たちが作る風潮"への風刺もじつに小気味いい。

これからは家庭を重視と言うヒロインを「国のために出馬してくれ」と説得するバド。ポジションを変えながらも、二人は終生よき戦友でありつづけるのだろう。

日本でもこういうのが書けそうというと、古沢良太がまず浮かぶが、現在『アイアングランマ2』の演出・脚本とも絶好調の飯田譲治も有望である。今年に入って一番スパイスの利いた台詞を聞かせてくれたのは、飯田氏である。

プロデューサーの一人が日系だからか、主要キャストに日系がいるうえ、それが不細工枠でないのが嬉しい。まあ、表情がちょっと硬いのが、演技指導によるものなのか、そうでないのかやや気になるが。アンを演じたブリタニー・イシバシがこれからもいい役に恵まれますように。
ヴァネッサ・レッドグレーブがエレインの恩師にして最高裁判事というのは、あまりなはまり役。

『女と男の観覧車』(監督&脚本:ウディ・アレン)

ここではないどこかを夢見る元端役女優のお話。80代に入っても精力的に映画を撮り続けるウディ・アレン。あと何作楽しませてくれるだろうか。

不幸な結婚生活を送っている……と思っている主婦が若い男と恋に落ちる。『カイロの紫のバラ』風味かと思いきや、かなり『ブルージャスミン』寄りであった。

1950年代のコニーアイランドが舞台で、女性のファッションがカラフル。遊園地で流しっぱなしの音楽もふくめ、何曲もオールディーズを楽しめた。

いつにもましてヒロインが語る語る。なんでそこまでアップを多用するかと思ったが。
生活に疲れた主婦の顔

浮き浮きし始めた主婦の顔

狂気交じりの女優の顔

の三段階の変化が見ものだった。ケイト・ウィンスレットはもっと大味な人かと思っていたが、今作の演技を見る限り『欲望という名の電車』のブランチもこなせそう。
上出来ではないにせよ、再婚した妻に「一緒に釣りしよう」、「一緒にボウリングに行こう」と呼びかける夫は好人物であり、日本の観客よりアメリカの観客のほうが「ヒロインはわりと身勝手」と感じそうだ。亭主役のジム・ベルーシはいかにもアメリカの下町にいそうな憎めないオヤジを好演。

ヒロインとまたも騒ぎを起こした息子とがとぼとぼ歩く後ろ姿で裏淋しく幕を閉じるのかなぁと予想しながら見ていた。予想ははずれ、ヒロインの顔を真正面から見せつけられるエンディングであった。豪華なドレスを着て厚化粧した時に、そのふるまいで内面が最大限剥き出しになるという皮肉。

アレンがまだまだ元気なら、次はさらっと粋なコメディを拝ませてほしい。

『コンフィデンスマンJP』第9話~第10話

大阪北部地震において被災された方々にお見舞い申し上げます。
震度7の揺れから3時間以内に電気を復旧させる電力会社の皆さんには、尊敬の念しかない。
粛々とインフラを復旧させる人々をまたもマスコミが邪魔しているようだが、こういうのを規制する法律でもできないものか。


何度も視聴者の裏をかいて新しい技を繰り出してくる古沢チームに脱帽。リピートしたくなる回はとくになかったものの、作り手の志が伝わってくる三か月だった。

一番意外性のあったのが第9話。古沢ならこう来るだろう! という予想を裏切って、「スポーツが人格を陶冶することもある」、「観客に幸せを与えることもある」等等、一周回った感じのスポーツ賛歌、人間賛歌の物語を見せてくれた。

最終回は重苦しい場面が延々と続くので、少々困惑。「こんなふうに生い立ちの苦労ネタで視聴者の心をざわつかせる作りはいやだな」と思わせてか~ら~の、"全部嘘でした"展開には、「全話で一番壮大なペテンだ!」という驚きと「また引っかかっちまった、自分のアホ」といううんざり感を同時に味わった。とちゅうまで、悪党どもは実は国税局ではないかと疑っていたのだが、同じ勘違いをした視聴者は他にいないのかな?

長澤まさみののびやかな魅力はかなり生かされていたと思う。ただ、他の古沢ドラマで主役を張った堺雅人長谷川博己とくらべると根がいい人だから(?)、露悪的な古美門的な台詞にじゅうぶんパンチを効かせられない場面も散見された。小手伸也は『真田丸』で名刺を配る塙団右衛門役が忘れがたい。今回はなんでもできるダー子の相棒としていいスパイスになっていた。

BGM"fox capture plan"もOfficial髭男dismの主題歌「ノーダウト」も楽しかった。